カール・ハウスカー、クリスティン・ミーク

This blog post was originally published in English on November 13, 2014.

11月12日、米国と中国は地球温暖化対策で重大発表を行い、両国の新たな目標を明らかにした。オバマ大統領は、米国の温室効果ガス(GHG)排出量を2025年までに2005年水準比26%~28%削減する方針を表明。一方、習近平国家主席は、中国のCO2排出量を2030年前後をピークとして削減し、2030年までに非化石燃料の比率を20%前後まで引き上げる目標を掲げた。気候変動に関する米中間の新たな連携は、歴史的な転換点となる可能性がある。

米国の今回の目標は、2009年にコペンハーゲンで合意した2020年削減目標17%を上回り、2050年までに排出量80%削減という目標達成を可能にするペースである。2025年の削減目標はかなり野心的ではあるが、既存の米国法のもとで達成は可能である。とはいえ、米国が今世紀半ばまでに低炭素経済を実現するためには、議会は向う10年間、積極的な対応を迫られることになろう。

オバマ政権が目標実現のために採用すると思われる主要な対策の一部は、2013年6月に発表された米国気候変動行動計画やその他の計画から明らかになっている。軽量自動車を対象とする新たなGHGおよび燃費基準、家電機器に対するより厳格な効率基準など、すでに導入済みの策もある。

米国環境保護庁(EPA)が提案しているクリーン発電計画では、2025年までに発電部門からの排出量を28%削減する方針である。オバマ大統領はさらにEPAや運輸省に対し、中型車両および大型車両について新たなGHGおよび燃料効率基準を定めるよう指示している。EPAは最近、地球温暖化係数の高い一定のハイドロフルオロカーボンの使用を段階的に縮小する規則を提案しており、この係数の低い代替物の使用を認める考えである。政府はまた、天然ガスをシステムなどからのメタン排出規制にも取り組んでいる。以上は、世界資源研究所(WRI)が報告書『Can The US Get There From Here?』〔仮題:米国の現状からして、この目標は達成可能か?〕の中で、2020年代におけるGHG排出量大幅削減に資するとした種類の対策である。こうした連邦政府の具体的施策を超えて、発電部門のCO2汚染対策に率先して取り組んでいる州も数多く、29州とコロンビア特別区が更新可能なポートフォリオ基準を、24州がエネルギー効率節約目標を定めている。また、カリフォルニア州および米国北東部はともに、GHG排出削減を目的にキャップ・アンド・トレード制度を導入している。イノベーションやテクノロジーの進歩によって、コストを削減し、提案された目標に軽く達するだけでなく、これを超えられる可能性も潜んでいる。最近の風力や太陽光発電のコスト低下傾向は、技術革新やスケールメリットが追い風となって今後も続きそうである。さらに、人口動向も低炭素経済の実現を後押しする可能性がある。例えば、最近の若者は昔の若者ほど車を利用しないようであり、米国では近年、年間車両走行マイル数の増加ペースが鈍る傾向にある。

2020年目標および新たに発表された2025年目標をクリアするには、各種経済部門や二酸化炭素および非二酸化炭素の発生源に取り組むなど、米国は多角的かつ効果的な対応が求められるであろう。最近のWRI調査結果報告書『Seeing is Believing: Creating a New Climate Economy in the United States』〔仮題:百聞は一見に如かず:米国に新たな気候経済を生み出す〕が示すように、経済に好影響が及ぶ可能性がある。

経済成長と気候変動への取り組みが両立可能であることは、ますます多くの証拠で裏付けられている...持続的な技術進歩と公共政策により、温室効果ガスを削減しつつ経済的利益が生み出す実例は現実世界にあまた[存在する]。さらに、多くの新技術の登場が削減ペースを早める可能性がさらに拡大することも夢ではなかろう。

米中両国による今回の発表はまた、気候変動やクリーンエネルギーに関する協力関係の強化にもつながった。両国は、共同で設立したクリーンエネルギー研究センター(CERC)の拡大・発展を進めている。CERCの目下の重点分野は、省エネビル、クリーンカー、先進石炭技術(CO2の回収・利用・貯留(CCUS/CCS)を含む)の3つである。センターといっても物理的な施設があるわけではなく、各国の研究者が共同研究を行うことでイノベーションが促進されるようなプラットフォームを提供している。この共同研究は5年間延長される予定である。今回の発表を機に、エネルギーと水のつながりにフォーカスする新たなCERCも追加された。センターのこうした発展は、この種の提携の有効性や重要性に加え、気候目標の実現可能性を高める成果の排出効果に対する両政府が確信の強さをうかがわせるものである。

WRIは、米中両国が当初の約束草案を早期に交渉のテーブルに乗せたことを高く評価し、パリでの世界的な気候変動枠組みの締結に向けて弾みがついたと見ている。世界の2大排出国である米中がそれぞれの排出削減について重要な合意に至ったことで、他の国々も連携して気候変動の深刻化阻止に取り組む機運が盛り上がりつつある。